「夫が脱サラして事業を始めました。経理を任せたよと言われたけど。でも、何から準備をすればいいの。役所への届出は?会計ソフトは何を使えばいいの?他に用意することは?」
主婦の方からこんな相談を受けました。
サラリーマン時代、会社の経理や総務が身の周りの世話をしてくれました。でも、いざ個人事業主になるとそんな訳にはいきません。事業に関する全てのことを、自分でしなければなりません。
そこで、現役会計事務職員、ゆきひろが開業時に個人事業主が事前にすべき3つ準備を解説します。
目次
⒈ 個人事業主がすべき3つの準備
・税務署への提出
・事業用口座の開設とクレジットカードの作成
・会計ソフトの導入
2.まとめ
1.個人事業主がすべき3つの準備
・税務署への提出
・事業用口座の開設とクレジットカードの作成
・会計ソフトの導入
業種によっては開業時に他にもやるべき事務処理があると思いますが、この3つは資金管理をする 上で特に重要なものとなります。
では、順番に解説します。
・税務署への提出(開業届等の提出)
次の書類をご自身の事業所を管轄する税務署に提出します。
- 個人事業の開廃業等届出書
- 所得税の青色申告承認申請書
- 青色事業専従者給与に関する届出書
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する承認書
ここで、「事業所を管轄する税務署」ですが、手っ取り早く調べるにはGoogle検索がおすすめです。
「管轄税務署(ご自身の事業所の住所)」で検索すると、管轄税務署が表示されます。
例えば「大阪市北区大淀南」に事業所のある方は、「管轄税務署 大阪市北区大淀南」と検索すれば、大淀税務署が表示されます。
次に上記1から4の書類について説明します。
1.個人事業の開廃業等届出書
個人事業の開廃業等の届出書とは、初めて事業を開始した場合に届け出る書類です。提出期限は事業開始の日から1か月以内となります。
2.所得税の青色申告承認申請書
所得税の青色申告承認申請書とは、青色申告の承認を受ける場合に届け出る書類です。
ここで、青色申告とは、日々の取引を複式簿記等で記帳して確定申告をする制度です。
青色申告には各種の特典がありますが、その中でも65万円(55万円)または10万円の特別控除は大きな魅力があります。
例えば、売上500万円、仕入300万円、経費100万円とします。
売上500万円から仕入300万円と経費100万円を差し引くと、所得は100万円となります。条件を満たして65万円の特別控除を受けると、所得は35万円になります。実際にお金を支払った経費ではないのに、65万円の経費として所得から差し引かれる。所得が65万円減るので、納める税金もその分減る。
売上500万円ー(仕入300万円+経費100万円)=所得100万円
所得100万円ー特別控除65万円=所得35万円
このように、特別控除には節税効果があります。
ただし、65万円の控除を受けるには以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
1.e-Tax を利用して申告書及び青色申告決算書を提出している。
2.電子帳簿保存法に対応する会計ソフトを用いて記帳し、かつ、電子帳簿保存の承認申請書を税務署に提出する。
提出期限は開業した日により、次の2つに分かれます。
開業日が1月1日から15日・・・・・・・・開業した年の3月15日まで
開業日が1月16日以降 ・・・・・・・・・開業から2か月以内
3. 青色事業専従者給与に関する届出書
青色事業専従者給与に関する届出書とは、青色事業専従者給与額を必要経費に算入する場合に届け出る書類です。つまり、家族や親族に支払う給与を経費として認めてもらうための書類です。
ただし、個人事業主で家族への給与が経費になるには4つの条件があります。
- 個人事業主と生計を一にしていること。
- その年の12月31日現在で15歳以上であること(ただし、学生は対象外)。
- 1年のうち6か月以上(年の途中で開業したなどの一定の期間の場合は、その期間の半分以上)その事業に従事すること。
- 専属でその仕事に従事していること。(原則としてほかにパートなどの仕事をしていないこと)。
★「生計を一つにする」・・同居していなくても、生活費や医療費などを送金 している場合(互いの家計が独立していない場合)は「生計を一つにしている」とみなされる。
4つの条件を全て満たす必要があります。
提出期限は、青色事業専従者給与を必要経費に算入しようとする日により、次の2つに分かれます。
算入日が1月1日から15日・・・・・・・・算入した年の3月15日まで
算入日が1月16日以降 ・・・・・・・・・開業から2か月以内
4.源泉所得税の納期の特例の承認に関する承認書
源泉所得税の納期の特例の承認に関する承認書とは、給与等から源泉徴収した所得税の納期について年2回にまとめて納付するという特例の適用を受ける場合に届け出る書類です。
当月分の給与から前もって天引きした源泉所得税(給与に対する税金)は翌月10日までに事業主が従業員に代わって納める必要があります。
例えば、3月分の給料の源泉所得税を4月10日までに納めるなど。
しかし、この書類を提出すると、次の期間に応じて、源泉所得税の納付事務が年に2回だけで済みます。
1月から6月までの源泉所得税(復興特別所得税も含む)・・・・・7月10日まで
7月から12月までの源泉所得税(復興特別所得税も含む)・・・・・翌年1月20日まで
提出期限は随時ですが、1~3の書類と共に提出するのがおすすめです。
1から4の書類は国税庁のHPよりダウンロードできます。Google検索で各書類の名前を検索すれば、リンクが表示されます。
作成した書類は税務署で直接提出することもできますし、郵送することもできます。
いずれにしても、2部作成しましょう。1部は税務署用として、もう1部は事業主控えとして保管しましょう。
郵送する際には、必ず切手を貼付した返信用封筒を同封しましょう。また、開業届にはマイナンバーを記載する欄があるので、マイナンバーが確認できる書類(マイナンバーカード、住民票等)と身分を証明する書類(運転免許証やパスポート等)の写しも同封しましょう。
郵送方法としては、簡易書留やレターパック等の追跡調査が可能な方法が良いです。
・事業用の口座開設とクレジットカードの作成
プライベート用の口座とは別に、事業用の口座を開設することをおすすめします。
個人事業は法人と違い、資金管理が曖昧になりがちです。事業用の口座を作ることで、事業用のお金の出入りが明らかになり、日々の経理処理をスムーズに行うことができます。さらに、事業用のお金には手を出さないという意識が芽生え、経営者としての金銭感覚が自然と身についてきます。
また、事業用のクレジットカードを作ることもおすすめします。
事業用の支払いはこのクレジットカードで決済します。そうすることで、カードの明細は全て事業用として支払われたものなので、経理処理が行いやすくなります。
開業当初は資金に余裕がなく、収入も不安定になりがちなので、カード審査が厳しくなることもあります。事業用のクレジットカードはサラリーマン時代に用意した方が良いでしょう。
税務調査が入った場合、帳簿以外にも通帳や領収書、カードの明細は必ずチェックされます。1つの口座や1つのカードで、プライベートと事業用の支払いが一緒に使用されていると、見られたくないプライベートの使用までもがチェックされることになります。
誤解を招かないためにも、資金管理を通じて公私の区別をつけるようにしましょう。
・会計ソフトの導入
会計ソフトは必ず導入してください。所得税の青色申告で65万円の控除を受けるにはこのソフトを用いて申告する必要があります。
数あるソフトの中でもおすすめなのが「やよいの青色申告オンライン」です。
老舗の会計ソフトで長年にわたって使われており、ユーザー数も多いです。また、ユーザー数が多いので、困った時にはGoogle検索等で問題解決が楽になります。
パソコンにインストールするデスクトップタイプではなく、オンライン型を勧める理由は、Mac・Windowsを問わずに使えるからです。
ネット環境さえあれば場所を選ばずに細切れの時間で作業ができる。本業に差し支えなく効率的に経理処理ができるのは大きなメリットですね。
2.まとめ
個人事業主としてやるべきことは多いと思います。
・税務署に届出を出す。
・口座を開設してクレジットカードを作る。
・会計ソフトを導入する。
ここから始めてみてはどうですか。
お金に関する手続きをしっかりすれば、本業に専念できると思います。
お金の管理が雑だと信用を失うことにもなります。失った信用を取り戻すのはかなりの労力が必要になる。だから、特にお金の管理については普段から丁寧にやった方がいい。
信頼される起業家になるためにも、お金の管理を大事にしましょう。